いつか会えるそのときまで・・・(天国の家族に捧ぐ)


           おばあさんの木の忘れられない思い出 

  わたしはこの公園に、もう70年以上も住んでいるおばあさんの木です
 まだ子供の木だった頃は、周りの景色がぐるりと見渡せるくらい何もありませんでした
 でも、70年と言う長い月日の間に、団地や働く場所が増えていき、そこへ学校や病院などが出来ると
 多くの人たちが移り住んできました
 それまで静かだった公園は、小さな子供を連れたお父さんやお母さん、ブランコや滑り台で遊ぶ子供たちで
 とても賑やかになりました
 楽しそうに遊ぶ子供たちを見ながら、公園のベンチに座って話している大人たちの顔は、自然と笑顔になっていました
 天気が良い日は、大人から子供まで大勢で楽しめるようになって、わたしの自慢の公園になりました
 そんな日々を送っている中で、ずっと忘れられない思い出があります
 あれは、もうすぐ冬が訪れる前の少し寒い日の夜明け前のことでした
 チュンチュン チュンチュン
 太陽がまだ姿を見せないうちから、鳥たちの声が聞こえてきます
 公園の木も草花たちも、それを合図に花や葉っぱや根っこの先を思いっきり伸ばし始めます
 その日はあいにくの空模様でしたが、いつものように木の仲間たちとワクワクしながら夜が明けるのを待っていました
 でもしばらくすると、いつもとは何か違うことに気が付きました
 鳥たちの声に混じって、ミャォー ミャォーと小さな泣き声が聞こえてきたのです
 声のする方に耳を傾けながら辺りを見渡してみると、みかんと書かれた段ボール箱が、わたしの根元に置かれているのを
 見つけました
 そのみかんと書かれた段ボール箱の中にかすかに動く気配がして、よく見てみるとまだ目が開いたばかりの両手にすっぽりと
 隠れてしまうくらい小さな仔ねこが、懸命に泣いていたのです
 わたしがそれまで見てきた仔ねこは、フワフワな毛につぶらな瞳は輝いていました
 でもみかんと書かれた段ボール箱の中の仔ねこは、体はやせ細り白くみえる毛は汚れていて、開いたばかりの目には
 輝きはありません
 側で守ってくれるはずの家族も居ません
 その様子を見ていたときです
 急に空が暗くなって、ポツポツと雨が降ってきました
 その雨の粒は、見る間に大きくなっていきます
 重なりあった葉と葉の間から、冷たい滴が落ちていき、仔ねこの体はあっと言う間に雨の粒に包まれてしまいました
 雨の音にかき消されそうになりながらも、仔ねこは懸命に泣き続けます
 このときほど、何もできないことが苦しいと思ったことはありませんでした
 どのくらいの時間降り続いたでしょうか
 少しずつ雨が止んで、暗かった空が明るくなってきました
 仔ねこを誰か見つけて欲しい
 良い結果と悪い結果が、頭の中で行ったり来たりしていた時です
 チリ~ン チリ~ン
 自転車のベルを鳴らしながら、たつや君がやってきました
 良かった これできっと仔ねこを見つけて貰える
 さっきまでの沈んだ気持ちが嘘のように、良い結果で頭の中はいっぱいになっていきました
 たつや君は、ときどきおしゃべりに来てくれる元気で明るい小学校六年生の男の子です
 お母さんと弟と妹の四人家族で、お母さんを助ける為に、朝と夕方新聞配達をしていました
 今日も雨の中、頑張って配達をしてきたのでしょう
 レインコートを着たたつや君の顔と手は、びしょ濡れでした
 「 おはよう
 急に雨が降ってきたから寒くて手がブルブル震えてね、新聞を配るとき落とさないかヒヤヒヤしたよ 」
 たつや君は、歯をガタガタさせながらわたしを見上げています
 「 今日は寒くて体が凍りそうだよ 本当はもっと話をしたいけど、今度またくるね 」
 自転車のペダルに足をのせると、とびきりの笑顔でそう言いました
 のどまで見えそうなくらい大きく開いた口の中は、虫歯で何本か欠けていました
 あぁ これでもう仔ねこに気がつかないまま行ってしまうかも知れない
 わたしが諦めかけたときでした
 ミャォー ミャォー
 最後の力を振り絞るように、仔ねこは泣き続けます
 そして、かすれて消え入りそうな仔ねこの声は、ようやくたつや君の耳に届いたのです
 「 んっ? 何か声が聞こえる? 」
 たつや君は声のする方へ耳を傾けながら辺りを見渡しました
 そして雨に濡れて今にもつぶれてしまいそうなヨレヨレの段ボール箱を見つけました
 「 あれっ? 木の根元に段ボール箱なんてあったっけ? 」
 ペダルから足をおろし自転車をおりると、おそるおそる段ボール箱の中を覗きました
 たつや君は一瞬だけ驚いていましたが、仔ねこを見つけるとすぐに嬉しそうな顔に変わっていきました
 「 わぁー小さな仔ねこだぁ こんなに冷たくなって雨に濡れて寒かったろう 」
 たつや君はブルブル震える仔ねこを抱き上げると、レインコートで包み込みました
 そして優しい声で仔ねこに言いました
 「 偉かったな よくがんばったな 偉いぞ 偉いぞ 」
 するとたつや君の思いに答えるように、仔ねこはのどをゴロゴロならし始めました
 仔ねこは温かなぬくもりに安心したのか、たつや君の腕の中で眠りにつきました
 たつや君はわたしを見上げてにっこり笑いました
 「 いつもぼくの話を聞いてくれてありがとう
 ぼくはお母さんと弟と妹の四人家族だからね
 お母さんは介護職員で朝早くから働いているし、ときどき夜も仕事なんだ
 仕事から帰ってきても、ゆっくり話をする時間がなくてね
 お母さんの代わりに、弟と妹の世話をしなければいけないし
 だから、少しでも話を聞いてもらえると気分が楽になるんだよ
 新聞配達は大変だけど、楽しいことが待ってると思うと頑張れるんだ
 でもまさか、こんな小さな仔ねこを見つけてしまうなんてね 」
 たつや君は目を細めてクスっと笑いました
 「 そのお礼ってわけではないけど、ぼくが必ずこの仔ねこに家族を見つけるよ 
 約束する 」
 たつや君はしっかりとした声でそう言い終えると、公園の入り口の方へ消えて行きました

  中学生になってしばらくすると、たつや君はお母さんの仕事の関係で、隣町に越して行きました
 引っ越しをする前に何度か来てくれて、その後仔ねこがどうなったのか話をしてくれました
 仔ねこは新聞配達先の家で、ねこが大好きな家族に迎え入れてもらったこと
 仔ねこの名前は、段ボール箱に書いてあったみかんに決まったこと
 汚れていた毛はお風呂に入れたら、真っ白な毛になったこと
 瞳の色は透き通った青色だったこと
 ご飯をもりもり食べて元気に育っていること
 元々その家にいたうさぎのミントちゃんとすぐに仲良くなったこと
 みかんはミントちゃんの真似をして、嬉しいときにするビヨヨ~ン飛びをすること
 おてんばな妹ができてお姉ちゃんのミントちゃんはお世話が大変なことなど、嬉しそうに教えてくれました
 
  わたしは毎年この季節になると、あの冬が訪れる前の少し寒い夜明け前の日を思い出します
 たつや君は、仔ねこに家族を見つけると言う約束を守ってくれました
 段ボール箱の中で、最後まで諦めずに泣き続けた仔ねこは、家族に見守られながら、青い瞳は輝いていることでしょう
 そしてわたしはこれからもこの公園で、みかんと名付けられた仔ねことたつや君のことを、忘れることはないでしょう
    


                            2018年3月11日  ゆうりん 




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2004年6月5日に虹の橋を渡った愛犬たつ(たつや君)
2006年3月12日に虹の橋を渡ったうさぎのミント(みかんのお姉ちゃん)
2006年4月8日に天国へ旅立ったおばあちゃん(おばあさんの木)

10年以上の月日を経て
ようやく自分の感情と向き合うことで
原文を読み返しながら
今の気持ちに素直に筆を進めることが出来ました

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お別れのときを思い返せば涙はこぼれてくるけれど
忘れないために何か形に残さなければ!
泣きながら書き上げた原文の気持ちよりも
たつとミントとおばあちゃんへの感謝の気持ちの方が大きくなりました

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大切な家族のことを忘れることはありません
もっともっと一緒にいたかった
叶うのならもう一度天国にいるみんなと暮らしたい

姿形はなくなっても、一緒に過ごした日々は蘇り続け
ずっとずっと心の中で、思い出と共に紡がれ続けています
これまでも
これからも
いつか会えるそのときまで・・・


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ボブの最後の写真は、気持ちよさそうに眠っていて
まさかこの写真をLineで送って貰った夜に
それまで元気だったボブと突然お別れがくるなんて・・・


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13才と9か月
犬生を一生懸命に生きたボブは
大好きな家族に囲まれて虹の橋を渡りました
悲しみが深すぎるとなかなか受け入れるのは大変です
涙ってこんなに出るのかと思うくらい
時を重ねてもずっと涙そうそうしてしまうものです

Sさんへ
このブログに訪問して頂いているブロガーの皆さんは
一度も会った事はありませんが、わたしにとって大切な存在になっています
ブログを初めてもうすぐ8年目になりますが
悲ししいことも苦しいことも全て記事にしてきました
そっと見守ってくれている人たちがいてくれるだけでいい
そっと見守って貰えるだけで前に進んでこれました
悲しみや苦しみを共に分かち合える大切な存在のおかげです
ボブの記事を読むブロガーの皆さんは
Sさんの気持ちをそっと受け取ってくださるって思います
誰かが誰かのことを思う気持ちは届くんですよ
沢山泣いてゆっくりゆっくり前に進んでくださいね



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テーマ : わんことにゃんこ
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プロフィール

☆がちゃこ姫。。

Author:☆がちゃこ姫。。






☆じゃっく  2004年6月18日生まれ♂

2004年6月5日に 6才の若さで愛犬たつ♂を熱中症で亡くし後を追うようにがちゃこ♀も原因不明の病で命をおとしかけた時通院していた病院に張られていたポスターに「きゅんきゅん」それが赤ちゃんじゃっくとの運命の出逢いでした。その頃ディズニーの「ナイトメァ」が好きで絵本の主人公の「ジャック」みたいに失敗しても負けないで強く明るく前に進む子になってほしぃ☆と願ってつけました^^ 





☆みかん  2009年6月生まれ♂

がちゃこが天へ旅たって 不安分離症になっていた じゃっくの薬をもらいに 病院へ行ったとき待合室に張られていたポスターを見て「真っ白で まるでがちゃこの生まれ代わりみたぃ」その出逢いは本当に 運命を感じました・・・

名前は ママが描いた絵本の主人公の名前が「みかん」
絵本の中の「みかん」と同じように 運の強い子に育ってほしぃ☆と願って つけました^^



☆ひな助  2011年11月生まれ♂

アニー動物病院のポスターを見て、一目ぼれして2012年3月3日に家族になりました。






☆がちゃこ  2009年9月30日(12才と9ヶ月)♀天使になりました。。
☆たつ   2004年6月5日(6才と2ヶ月)♂天使になりました。。


☆ミント  2006年3月12日(3才)♀天使になりました。。


☆3にゃん兄弟。。  
左:菊千代(次男) 

真中:風太郎(三男)
        
右:五衛門(長男)


☆蘭  2004年3月20日♀ 天使になりました。。


☆キキ  2004年3月生まれ♂


☆さぃとぉ君  2005年3月生まれ♂

キキとさいとぉ君は2011年8月28日、パラドックスのハッチの家の子になりました♪

天使になった最愛の子どもたちに・・想いを届けたい。。
そんな思いから。。ブログ日記をはじめました♪
☆キキ・じゃっく・さぃとぉ君・みかん・・
4ぴきの弟たちが、これからも元気に成長してくれますように。。ママからの願いをこめて。。

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